なんだかんだ言っても、このASB?のメインコンテンツはサバイバーのリプレイです。
ようやく完成。
今回は予想外の新人を加えての新生「ラ=ピュセル」の初興行。
楽しんでいただければ、幸いです。
では、どうぞ
リプレイ58 鼓動
合宿所の食堂に、決定したばかりの4月シリーズの対戦カードを掲示する。
いつもの事ながら、歓声と悲鳴、そして溜息。
なるべく全員に見せ場を作っているつもりだけれど、長期の思惑の中では、冷遇せねばならない時もあるのです。
貫くような視線を向けるサイクロン近藤を敢えて無視して、私は新人の二人に声をかけた。
「ちょっと早いかも知れないけれど、あなた達なら大丈夫だと思う。4月シリーズからデビューさせるから、そのつもりでね」
キリッと口元を引き締め、頷く。そして、互いに睨み合う。
これほど緊張感のある同期は初めてだ。教育係となっている柳生美冬は
「認め合うからこそ、競おうとするのでしょう」
と、達観している。度を超さなければ良いけれど……と心配する私は、いらぬお節介なのかも知れない。新人が入ったら、お姉さんぶろうと画策していたラズベリー榎本には可哀想だけれど、今年の二人は、綾よりは数段大人なのだから。
「越後しのぶに、霧島レイラ。いつになく質実剛健な新人ですね」
不意な声に振り向くと、週刊レッスルの記者、西町珠理が微笑んでいた。
「西町さん、ここは部外者立ち入り禁止です」
「すみません。インタビュー中の白石なぎさ選手が、対戦表が発表されたと聞いて、ふらふらと歩き出してしまったものですから、つい一緒に」
……それは仕方ないか。
なぎさは、いつものようにふわんと対戦表を眺めて、スターライト相羽に発破をかけられている。同期のギムレット美月と組んでの、ジャンヌ永原・金井美加組とのタッグ王座戦と、シングルでハイサスカラスに挑むAAC世界王座戦がなぎさを待っているのだ。
その相羽も、いの一番開幕戦のメインイベントで、同じハイサスカラスの持つPWPW世界ヘビー級王座に挑む予定だ。ジャンヌ永原をナターシャ・ハンのEWA挑戦も含め、合計4大王座戦を並べた豪華なシリーズは、ゴールデンウィークに相応しい華やぎだろう。
息つく間もなく始まる5月シリーズのカードは、まだ何も決まっていない。すべては、4月シリーズの結果を見て考える必要があるのだから。
3つの王座を争う3人の若手。
新生「ラ=ピュセル」は、この戦いを軸に動き出す。
辺りを窺い、西町さんは声を顰めた。
「近藤選手には、説明をしなくても良いのでしょうか。場合によっては、記事の中で仄めかすことくらい、出来ますが」
「それは、近藤が自分で気づかなければ、いけない事です」
「スパルタですね」
元は選手としてリングに立っていた変わり種の記者だけに、こちらの考えはお見通しらしい。もっとも、当の近藤は顰め面をして対戦表を睨み付けているのだから、困ったものだ。
睨み付けたところで、メインイベントに自分の名前が現れるわけがない。4月シリーズすべてのメインイベントから、近藤を外した意味を考えてみて欲しいのだけれど。
「世代交代の失敗は、私の責任だと思うから。必要な厳しさは持たないと……。これは、私の反省です」
「近藤選手が気づいてくれることを祈ります」
「気づかないようなら、それこそエースの看板を背負う器量じゃないって事でしょ。これはサイクロン近藤をエースとして認めさせる、最後の機会なんだから」
もう、市ヶ谷麗華に頼れない。草薙みことも、芝田美紀もいないのだ。
この先の「ラ=ピュセル」を支えてゆくのがサイクロン近藤なのか、若手の3人の内の誰かなのか。近い将来に結論を出さねばならない。
他ならぬ、彼女たち自身の手によって。
まず、真っ先に拳を突き上げたのはスターライト相羽だ。
ハイサスカラスの空中殺法に手を焼きながらも、起死回生のスターライトジャーマンで優位に立ち、力任せのラリアートで強引に押し潰した。
「みなさんっ! やりましたぁー!」
高々とベルトを掲げ、歓喜を爆発させる相羽に惜しみない拍手が贈られる。ジュニア王座以来、久しぶりのタイトル奪取だ。はしゃいでしまうのも、無理はない。いつものようにセコンドについていた美月や、なぎさまで引っ張り上げての大はしゃぎ。
さすがに気に障ったのだろう。ハイサスカラスがマイクを取り、スペイン語で何かを言い放つ。
で、こちらを見られても困る。
通訳担当を指さして、そちらに話を振った。
「ずるんいだから」と、言いたげに唇を尖らせたものの、外面の良い秘書兼リングアナの井上霧子は、見事な笑顔を作って通訳する。
おおざっぱに訳すと、『今日は負けたが、それはまぐれだ。次は私本来のAACのベルトを賭けて勝負しろ』という内容のはず。
PWPWは、太平洋女子プロレスが認定するヘビー級のシングルベルトだ。よって、あちらの意向で、ハイサスカラスにリマッチ権無しという取り決めがある。カラスが相羽に、雪辱したければ、自分の保持する本来のベルトを賭けざるを得ない。
それを聞いた相羽は、意外にも不適な笑顔を見せた。
「もちろん、戦うことに異存はありません。でも……」
霧子が通訳するのを待って、隣できょとんとした顔をしていた白石なぎさの腕を引く。
「カラスさんのリマッチの相手は、このノエルちゃんになるかも知れませんよ」
いつの間に、客あしらいを覚えたのやら。
代理の宣戦布告に、会場がどっと沸いた。
そう。最終戦の札幌で、カラスは先になぎさの挑戦を受けるのだ。
相羽に促されて、訳もわからずに、なぎさがVサインをするものだから、カラスの怒りも尋常じゃない。順番をどうしようかと悩んだ末の相羽開幕、なぎさ最終戦だったが、どうやら大正解だったらしい。
最終戦に向けて、ハイサスカラスの、そしてファンのヒートアップは間違いない。
「わっきーばかりに、良い格好はさせてられないからね」
気合で臨んだジャンヌ永原のEWAタイトル戦だったが、ナターシャ・ハンの徹底した脚攻めにあい、最大の武器であるスープレックスの踏ん張りを奪われてしまっては仕方がない。善戦空しく、涙を呑んだ。
そして、ファン注目のタッグ戦。
永原・金井の王者組に、なぎさ・美月の同期タッグが挑んだのは、青森大会。シリーズの途中で流されやすい青森大会とはいえ、今回は注目のタッグ王座戦。久しぶりに入ったテレビカメラに、会場の雰囲気も上々だった。
互いに譲らぬフルタイムドローの決着にも、惜しみない拍手が贈られた。
「もう一回だからね。絶対決着をつけるんだから」
必殺のはずの裏投げ風変形ノーザンライトスープレックス『QTスペシャル』を腕ひしぎ逆十時に切り替えされたのは、さすがに悔しかったらしい。滅多にない真剣さで金井が叫ぶ。
「……うん……頑張る……」
何とも気の抜けた返答に苦笑が漏れたが、この状況でなぎさがマイクを取ったことの方が大事件。あそこまで追い込んで勝てなかったのは、彼女であっても悔しいのでしょう。もちろん、なぎさ・美月組も同じくらいに追い込まれてはいるのだけれど……。
会社側としても、まったく問題はない。決着は5月に持ち越しだ。
最終戦の札幌。意地のカラスが、何とかノエルのパワーをいなして、一瞬のフランケンシュタイナーで王座防衛に成功。相羽への雪辱を誓って、4月のシリーズを終えた。
「ええっ! これって……本当に良いんですか。ボクなんかが、こんな……」
5月のカレンダーは始まったばかりだけれど、ゴールデンウィークは待ってはくれない。稼ぎ時を逃さず興行を打つのは、ショービジネスの基本です。
長期ツアーで疲れているところを申し訳ないけれど、荷物を詰め直したらすぐに四国へ発つのが今年のスケジュールだ。プリントアウトしたばかりの対戦表さえ、食堂に貼り出す暇もなく、バスの中で回覧となった。
ゴールデンウィーク中に四国で4試合。少し間を開けて、中国地方で4試合というのが5月の日程。その最終戦に、久しぶりに30000人を飲み込む若鯉球場を選んだ事も驚いただろうけれど、そのメインイベントに自分の名前を見つけた相羽は、久しぶりに弱気の虫が顔を出した。
「話題性は充分。あとは、スターライト相羽の商品価値の勝負だからね」
冗談半分にからかってやると、相羽の顔は可哀想なくらいに蒼醒める。これほどの規模の大会場のメインは、ウチの団体ではいつも市ヶ谷麗華が務めてきた。市ヶ谷も参戦してはいるが、今回は相羽のメインを譲り、準メインでジャンヌ永原とのシングル戦の予定。
前シリーズで唯一王座を奪った相羽へのご褒美である以上に、今後の「ラ=ピュセル」を占う大事な大会となる。
果たして、スターライト相羽の試合で、若鯉球場を埋めることが出来るのか。
埋めて貰わなければ、私は本気で困ってしまう……。
「バカッ! いくら何でも早す……」
ヒステリックに怒鳴る富沢礼子の声が、一瞬止まった。
ゴングと同時に飛び出した永原の、意表をついたいきなりのジャーマンスープレックスが、きれいに決まって美月をマットに叩き付けたのだ。「どんなもんだいっ」と言わんばかりに富沢に目配せをして、今度はブレーンバスターで投げ捨てる。
すっかりリズムを崩された美月は、防戦一方でなぎさと交代するチャンスを窺うばかり。
「バカの一つ覚えも、たまには役に立つじゃん」
「レイちゃん。バカって言う方がバカなんだよ……」
「うるさいっ! 美加は試合に集中しなさい」
うっかりこぼれた言葉に突っ込まれ、頬を赤くした富沢が眉を吊り上げる。
そんな得意の掛け合いをやるくらいに余裕が生まれた王者組は、つけいる隙を与えない。代わったなぎさを孤立させ、早めの交代で相手のスタミナを削ってゆく。
そして、最後はリズムに乗った金井の、軽快なシャイニングウィザードが美月の気持ちをねじ伏せた。
先輩の意地を見せた完全決着。
シングルではすっかり追い抜かれてしまった彼女たちだが、チームワークでは一枚上らしい。得意満面な彼女たちを祝福しながらも、次は誰を挑戦させるべきか考えてしまう自分が、ちょっと嫌になってしまう。
防衛してこその王座だと、解ってはいても。
「……あ……わっきー……」
東京から駆けつけたカメラマンさんが届けてくれたらしい早刷りの週刊レッスル最新号を、ちゃっかりと一番先に手に取ったなぎさが呟いた。タッグ王座奪取ならずで、しょんぼりしていた彼女なのに、とろんとした瞳をまん丸に見開いた。
なんと表紙は、スターライト相羽が飾っているではないか。
相羽とハイサスカラス。背景に若鯉球場。煽り文句は『初夏の広島決戦 時来る!』……西町さんも、やってくれる。
「ええっ! ボクが表紙なんて……本当に良いんですか……」
それは西町さんに訊いて。売れると思ったからこその、表紙に相羽でしょう。
もちろん、相羽が表紙になるなんて、初めてのことだ。
「自信を持って、相羽選手。前売り券の売れ行きは、かなりのハイペースですよ」
裏付けるように、霧子が言葉を添える。
現在「ラ=ピュセル」で唯一のシングル王者だけに、ファンの期待も注目も、かつてないほど大きくなっている。彼女が腰に巻くベルトは、他ならぬハイサスカラスから奪ったものだ。2冠への期待は大きい。
「ハハハ……でも……何でボクなんだろう……」
そう思っているのは、もはや自分自身だけでしょう。
丸まった背中を思い切りひっぱたいてやって、もう一声かけてあげる。
「しっかりしなさい。なぎさがEWAを獲って、相羽がAACを獲ったら、二人で3冠戦の予定だからね」
その言葉にハッととなるのは、わざと主流から外しているサイクロン近藤と、今シリーズは機会を与えられていないジャンヌ永原。彼女たちのプライドが、二人に置いて行かれることを許さない。
その目に浮かぶ炎は、嫉妬ではなく闘争心だ。
「うわあ……こんなに一杯のお客さん……ボクどうしたら……」
遂に迎えた最終の広島大会。
詰めかけた観衆は、すでに30000人を突破している。メインイベンターとしてのスターライト相羽に、ファンが下したのは、この『超満員札止め』の満額回答だ。
前売りや反響等で、すでに手応えをつかんでいたものの、実際の大観衆を前にすると、やはり安堵で全身の力が抜けてしまいそうになる。
これなら大丈夫。「ラ=ピュセル」は死にはしない。
会場の熱気が選手を動かし、選手たちの頑張りが、またファンの声援を呼ぶ。
青い顔をしているのは新米メインイベンターくらいのもので、リングに向かう顔、戻ってきた顔は、どれも興奮で頬を火照らせている。
この大会は、大成功だ。
いよいよ準メイン。自らのテーマ曲はすでに流れ始めている。
しかし、市ヶ谷麗華は入場口に進みかけて、思い直すように踵を返した。
入場口の脇に控える相羽に歩み寄り……その頬を思い切り平手で貼った。
「なにを! いきなり……」
「いつまで情けない顔をしているつもりですの! しっかりなさい」
言い返そうとした相羽を、今度は凛とした声が打ち付ける。ショートジャケットの胸ぐらをつかみ、柳眉を逆立てた美貌を押しつけるようにして、女帝が声を張り上げた。
「これくらいの会場を埋めるのは当然でしょう! あなたは、世界でただ一人。新日本ドームでデビューしたプロレスラーなのですよ! 胸を張りなさい。社長ばかりではなく、わたくしも、先輩方も、あなたにはそれだけの期待をかけているのです!」
「でも……ボクには……」
「ええ……わたくしと比べて卑下するなど、100億年ほど早いですわっ! あなたは力のすべてを出し切ることだけを考えなさい。気合と根性以外に、わたくしに匹敵するものを持ってなどいないでしょう!」
それだけ言って、ドンと相羽を突き放した。
「はいっ!」
いつもの相羽の元気の良い返事が返る。
市ヶ谷麗華の口元が、かすかに綻んだ。
「これが、わたくしが伝えるべき最後の言葉です……」
その言葉の真意を確かめる暇も与えず、市ヶ谷は花道へと進んでゆく。
千両役者の登場に、満員のスタンドが沸き返った。
47分34秒。
ギリギリの鍔迫り合いは、勝敗を超えて観客の心を掴んだに違いない。
狙い澄ましたムーンサルトプレスは、相羽の反撃を断ち切り、ハイサスカラスは雪辱を果たすと共に王座を守った。
「すみませんでしたっ」
試合後、控え室に戻った相羽は、開口一番頭を下げた。
そして、その場に最も伝えたかったであろう相手の姿がないことに気づいて狼狽した。
スターライト相羽の試合を途中まで眺めて、市ヶ谷麗華はすでに帰京の途についていたのだから。
新たなメインイベンターの誕生を確かめて、女帝は決意を固めた。
6月。
市ヶ谷麗華がリングを去る。



ところで、今朝『愛』を起動し早速【ラ=ピュセル】と軍団戦をしたところ、先鋒の相羽(ラ)×上原(ス)戦・・・試合自体は能力差もあって直ぐ終わりましたが・・・恐るべし相羽、たった二分足らずの試合でさらに耐久Cの上原さんを一発負傷!身体能力を4〜5下げる脅威のダメージ(評価値ガタ落ち)!!試合に負けて勝負に勝つあたり『サバイバー』リプレイ同様未来のエースの片鱗を見せてくれました!!
ともあれ『サバイバー』『愛』共にリプレイ頑張って下さい(^^)
慣れ親しんだキャラの衰退&引退は辛いのですけれど
それ故、ドラマとして二次創作してみたくなるのがこのゲーム。
これさえなければ、私はこんな事をしていなかったはずなのに(^^ゞ
でも、その分
新しい顔ぶれや、新人たちが伸びてきてくれるのが嬉しいのですよね。
今年の二人は、どこまで伸びてくれるのでしょうか?
『愛』の香苗ちゃん。
私が使用しているときには、そんな活躍はしないのにw
外弁慶なのでしょうか?